PATENT PENDING · 2026.07.19 出願 · 教え子との共同発明

同じ時刻に寝ても、
朝の目覚めは、
同じじゃない。

寝る直前にしていたのが、プログラミングだったのか、動画だったのか。それだけで、寝つくまでの時間も、翌朝の起きやすさも変わります。この「直前の作業の種類」を説明変数として、入眠までの時間・翌朝の起床結果とセットでその人専用に機械学習し、アラームを鳴らす時刻を決める——それがこの発明です。

私がプログラミングを教えている教え子との共同発明として、弁理士を立てずに本人電子出願しました。発明者は2名、筆頭は教え子です。

作業履歴及び睡眠状態に基づく起床制御システム、起床制御方法及びプログラム

発明のあらまし → 出願までの道のり 提出図面を見る
[ 出願までに考えたこと ]

思いつきを、
出願するまで。

発明は、ある日ひらめいて終わり——ではありませんでした。困りごとを疑って、思い出して、既にあるものを調べて、また考え直す。教え子と一緒にたどった道のりを、順番に残しておきます。

ノートパソコンに向かって考えごとをしている教え子。「ぼくのアイデアで未来を変えたい!」「こんなものがあったらいいな…」「みんなの困りごとを解決するには?」「ワクワクする特許アイデアってなんだろう?」「考えるって、未来をつくる第一歩。」という言葉が添えられている。
  1. STEP 01 | 困りごと

    「朝、どうしても起きられない」

    始まりは、授業の雑談でした。アラームは鳴っている。止めた記憶もある。でも次に気づくと30分経っている——という話。市販の目覚ましアプリはひと通り試した後でした。

    教え子のことば「アラームを増やしても意味がない。止めて寝てるだけだから。」
  2. STEP 02 | 最初の仮説を疑う

    「睡眠時間が足りないだけ」なのか?

    いちばんありそうな説明から疑いました。ところが、思い返してみると同じくらい寝ているのに、すんなり起きられる日と、まったくダメな日がある。時間の長さだけでは説明がつかない、というのが最初の手がかりになりました。

  3. STEP 03 | 思い出してみる

    話しながら、ここ最近の夜を一つずつ

    記録を取っていたわけではありません。話しながら、直近の夜を思い出していっただけです。「あの日は何時に寝た?」「その前は何をしてた?」「翌朝はどうだった?」——順番に並べていくうちに、「なんとなくそんな気がする」だった実感が、比べられる形になっていきました。

  4. STEP 04 | 気づき

    違いは「寝る前に何をしていたか」にあった

    同じ23時半に切り上げた日でも、プログラミングをしていた夜は寝つくのに1時間近くかかり、そのかわり朝は自然に目が覚める動画を見ていた夜はすぐ寝落ちするのに、夜中に目が覚めて、朝は二度寝する。時刻ではなく、直前にやっていたことの種類が効いているらしい、と見えてきました。

    教え子のことば「時間じゃなくて、“何をしてたか”で朝が変わるってこと?」
  5. STEP 05 | 既にあるものを調べる

    「それ、もうあるんじゃない?」を先に潰す

    思いついたら、まず世の中を疑う。調べると、浅い眠りのときに鳴らす目覚ましも、スマホの操作から就寝を推定する仕組みも、すでにありました。ここで一度、素直にがっかりしています。

    ただし、よく読むと共通点がありました。どれも見ているのは眠ってしまった後か、せいぜい「寝ようとしている合図」まで。寝る前に何の作業をしていたかを予測の材料にしているものは見当たらない——ここが残っている、と分かりました。

  6. STEP 06 | 仮説を組み直す

    「作業の種類」を、機械に教えられる形にする

    人間の実感を、そのまま機械に渡すことはできません。そこで、使っていたアプリやサイトから作業を種類に分ける作業を終えてから寝つくまでの時間を測る翌朝どう起きたかを結果として記録する、という3点セットに分解しました。この3つが揃えば、あとは学習させられます。

    そしてもうひとつ大事な発見。この傾向は人によって違う。誰にでも当てはまる法則ではなく、その人専用に学習するしかない、という結論になりました。

  7. STEP 07 | 最初の難所

    そもそも「作業が終わった」のはいつ?

    実装を考えはじめて詰まったのがここでした。アプリを閉じた=終わり、とすると簡単に誤判定が起きます。PCを閉じたあと、スマホで同じ続きをしていることが普通にあるからです。

    そこで、ひとつのイベントで決めるのをやめました。保存・終了・画面消灯・ロック・無操作といった複数の合図を重みづけして「終わったらしさ」を計算し、さらに別の端末で続きをしていないかを確かめてから確定する、という形に。

  8. STEP 08 | 二つ目の難所

    気持ちよく起きても、遅刻したら意味がない

    「起きやすい瞬間に鳴らす」を突き詰めると、予定に間に合わなくなります。当たり前ですが、これは発明として片付けておかなければいけない点でした。

    結論は、翌日の予定から逆算した『これ以上は寝ていられない時刻』を上限として先に決め、その手前で一番起きやすい瞬間を選ぶ。自由に選ばせるのではなく、枠を先に置く、という順番にしました。

  9. STEP 09 | 特許にできるのか

    「部品はぜんぶ既にある」という壁

    本格的に先行技術を調べると、要素はことごとく公知でした。操作ログからの就寝推定も、浅い眠りでのアラームも、作業内容の推定さえも、それぞれ別の特許があります。

    ここで教え子と話したのは、「新しい部品がないと発明じゃない、わけではない」ということ。誰も繋げていない繋ぎ方なら、それは新しい。実際に残ったのは、①作業を種類に分けて説明変数にする ②作業の種類から寝つくまでの時間を予測する ③翌朝の起き方を教師データにして個人別に学習する——この3点でした。

    教え子のことば「部品が全部あっても、組み合わせが新しければいいんだ。」
  10. STEP 10 | ことばにする

    請求項という、いちばん短い作文

    最後は書類です。思っていることを、広すぎず狭すぎない一文にする作業。広く書けば先行技術にぶつかり、狭く書けば誰でも避けられる。この綱引きを、独立項1つ+従属項で少しずつ限定していく形に落とし込みました。

    図面も自分たちで引きました。全体構成、作業終了の判定、学習データの中身、予測の更新、アラームを決めるところ——提出した5枚が、考えたことの地図になっています。

  11. STEP 11 | 出願

    2026年7月19日、送信

    特許庁の「インターネット出願ソフト」から電子出願。弁理士は立てず、明細書も請求項も図面も自分たちの手で。困りごとの雑談から、特願2026-174849という番号がつくまでの記録です。

[ 発明のあらまし ]

アラームは、
「時刻」しか知らない。

目覚まし時計は、私たちが眠る前に何をしていたかを知りません。スマートウォッチと連動して「浅い眠りのときに鳴らす」ところまでは既にありますが、それは眠ってしまった後の話です。

この発明の着眼は、その手前にあります。同じ23時30分に端末を閉じたとしても、直前にやっていたのが集中を要するプログラミングだったのか、寝落ち間際まで見ていた動画だったのかで、寝つくまでの時間も、夜中に目が覚めるかも、翌朝すんなり起きられるかも変わってきます。しかも、その傾向の大きさも向きも人によって違う

ならば、作業の種類を入力の特徴量に、その夜の起き方(起床結果)を教師データにして、その人専用のモデルを学習させればいい。そうすれば、作業を終えた時刻が同じでも、作業の種類に応じて違う起床予測が出せます。あとは翌日の予定から逆算した「これ以上は寝ていられない時刻」を上限として、その手前で一番起きやすい瞬間にアラームを鳴らす——というのが、出願した仕組みです。

🗂️

① 作業を「種類」で見る

最終操作時刻ではなく、文書作成・プログラミング・会議・動画・SNS…という作業種別を説明変数にする。

🧠

② 起き方を教師データに

起床時刻・スヌーズ回数・二度寝の有無・自然起床かどうかをラベルとして、利用者別モデルを学習・更新する。

③ 予定を上限にして鳴らす

翌日の予定から移動・支度を引いた最終起床時刻を超えない範囲で、起きやすい睡眠状態の瞬間を選ぶ。

[ 解決しようとする課題 ]

3つの、届いていなかったところ。

課題 1

直前の作業の種類と、作業終了から入眠までの時間が、その後の起床に及ぼすその人固有の傾向が、予測にもアラーム制御にも使われていなかった。

課題 2

「アプリを閉じた」という単一のイベントだけで作業終了と判定すると誤る。PCをスリープさせた後にスマホで同じ案件の続きをしていれば、それはまだ作業中——複数端末にまたがる継続を見落とす。

課題 3

睡眠にとって望ましい起床時刻と、予定に間に合う最終起床時刻は、しばしば食い違う。眠りを優先して遅刻しては意味がなく、予定だけを優先すれば最悪の瞬間に叩き起こされる。

[ 仕組み / ARCHITECTURE ]

6つの部が、夜をつなぐ。

操作ログの取得から、アラームを鳴らす瞬間の決定まで。処理はサーバでも、端末やウェアラブルの中でも実行できます(本文の解析結果を送らず、端末側で算出した特徴量だけを使う構成も明細書に記載)。

① 操作情報取得部アプリ/タブの起動・終了、画面の点灯消灯、ロック、スリープ、入力操作、無操作時間を複数端末から取得
② 作業終了判定部終了イベントを重み付けして作業終了確度 Pe を算出。別端末で継続中なら Pe を下げ、同一の作業セッションに統合
③ 作業分類部使ったアプリ・サイト・ファイル・操作量から、文書作成/プログラミング/会議/動画/SNS/読書…に分類
④ 学習部[作業種別 × 作業終了→入眠の経過時間]を入力、[起床結果]を教師データにして利用者別モデルを生成・更新
⑤ 起床予測部当日の作業種別と入眠までの経過時間をモデルに入力し、予測起床時刻/時間帯と予測信頼度を得る
⑥ アラーム制御部予測 + 予定から逆算した最終起床時刻 + 睡眠状態から、実際に鳴らす時刻を決定
入眠検出部心拍・呼吸・体動から実際の入眠時刻を検出(センサーが無ければ無操作・充電開始・照度等から推定)
予定解析部カレンダーやメールから翌日の予定を取得し、移動・身支度・余裕を引いて最終起床時刻を算出
睡眠状態推定部覚醒・レム・ノンレムを推定し、起床候補時間帯の中で起きやすい瞬間を特定

予測は、3回更新される

作業終了の時点でまず暫定予測。実際の入眠が検出されたら実測値で更新。睡眠中に中途覚醒があればさらに更新。

データが無い期間も動く

使い始めは匿名化された複数利用者のデータから作った初期モデル。個人のデータが貯まるにつれ、利用者別モデルの重みを上げていく。

中身は送らなくていい

ウェブページや文書の本文をサーバに送らず、端末側で算出した作業種別・特徴量・匿名化IDだけを使う構成も明細書に記載。

[ 図面 / DRAWINGS ]

実際に提出した、5枚。

※ 特許庁に提出した図面そのもの(様式に合わせたグレースケール)。

起床制御システムの全体構成ブロック図。利用者端末10、睡眠測定装置20、サーバ装置30(操作情報取得部31〜アラーム制御部39)、予定情報提供装置40、アラーム装置50。 操作情報から作業終了時刻を特定する処理のフローチャート。終了イベント抽出、作業終了確度の算出、他端末での継続判定、作業終了の確定。 学習データの構造。作業種別、作業継続時間、作業終了時刻、入眠までの経過時間、入眠時刻、起床時刻、起床原因、再入眠の有無を1睡眠機会ごとに対応付けた表。 作業終了後に起床時刻を段階的に更新する処理のフローチャート。作業終了時の第1予測、入眠検出後の第2予測、睡眠中の再更新。 予定開始9:00から移動50分・準備40分を差し引いて最終起床時刻7:30を算出し、その手前の起床候補時間帯で浅い睡眠が検出された7:18にアラームを作動させる図。
図1 — 全体構成

利用者端末・睡眠測定装置・サーバ装置・予定情報提供装置・アラーム装置の関係。サーバ装置の中に9つの機能部が並びます。

[ 実施例 / TWO NIGHTS ]

同じ23:30。違う朝。

明細書の実施例1・2より。作業を終えた時刻はどちらも23:30。違うのは、直前にやっていたことだけです。

📝

実施例1 — 文書作成の夜

23:30 保存 → アプリ終了 → スリープ
  • 関連する作業が他端末に無いことを確認し、23:30を作業終了時刻に確定
  • アプリと入力操作から作業種別を「文書作成」に分類
  • この人は同種の作業後、平均約60分で入眠する傾向 → 0:30入眠と暫定予測
  • 実際の入眠は0:45。経過時間75分で予測を更新 → 予測起床時間帯 8:10〜8:30
  • ただし予定からの最終起床時刻は7:30。7:00〜7:30を起床候補時間帯に設定
  • 7:18に浅い睡眠を検出 → 7:18に作動
📺

実施例2 — 動画視聴の夜

23:30 再生終了 → 画面消灯
  • 作業終了時刻は実施例1とまったく同じ23:30
  • 作業種別は「動画視聴」に分類
  • 同じ人でも、動画視聴後は入眠までが平均約20分と短い
  • 一方で睡眠の前半に中途覚醒が起きやすく、アラーム停止後の二度寝も出やすい
  • この対応関係が利用者別モデルに学習されているため、起床予測は実施例1とは別の答えになる
  • → 作業終了時刻が同じでも、種類が違えば予測が変わる。これが従来技術との分かれ目

※ 数値は明細書中の実施例として記載したものです。傾向の大きさも向きも利用者ごとに異なる、というのが本発明の前提です。

[ これから ]

発明は、一度きりじゃない。

今回いちばん伝わったのは、特許が特別な人だけのものではない、ということでした。困っていることに気づくなぜだろうと考えるすでにあるものを調べる自分のことばにする。この順番さえ知っていれば、次のアイデアも同じように形にできます。

だから、これからも「あったらいいな」を口に出してほしいと思っています。思いついたことを黙って流さずに、もう一度、なんで?と聞き返せる人でいてほしい。1件目より2件目、2件目より3件目のほうが、きっと速く書けるようになります。

次のアイデアへ

困りごとは、まだいくらでもあります。「自分が困っていること」がいちばん強い出発点——それは今回の発明が証明しました。

二度目は、速い

一度通った道は、次はもっと短くなります。調べ方も、請求項の書き方も、電子出願の手順も、もう手の中にある

作って、届ける

権利にしただけでは、まだ誰の朝も変わりません。いまは実際に動くアプリをプロトタイプとして実装中。使ってもらうところまでが発明です。

さて、次は何を作ろうか。

MASAFY

思いついたことを、
権利の形にするところまで。

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