わたしが子どもと向き合うとき、いちばん大切にしているのは「正解を渡すこと」ではありません。その子の中にある『やってみたい』を見つけて、一緒につくり、一緒に転んで、一緒に立ち上がること。セキュリティエンジニアでありメイカーでもあるわたしが考える、これからの時代の学びについて書きました。
子どもは、空の器じゃない。
火を灯せば、自分で燃える。
わたしの仕事は、知識を注ぎ込むことではなく、その子がもともと持っている好奇心に火を灯すこと。あとは本人が、思っているよりずっと遠くまで走っていきます。
「こう教えるべき」というメソッドではなく、子どもと向き合うときに自分が立ち返る、6つの軸です。
答えをすぐ渡すと、考える筋肉は育ちません。「どうしてそう思った?」「他のやり方は?」と問い返す。回り道に見えても、自分でたどり着いた答えだけが、その子の血肉になります。
プログラミングは、エラーと仲良くなる練習でもあります。バグが出たら「やった、ヒントが出た」。うまくいかないことは、責められることじゃなくて、次の一手を教えてくれる情報。失敗を怖がらない子は、どこまでも挑戦できます。
先生が前に立って一方的に教えるのではなく、同じ画面を見て、一緒に悩む「伴走者」でありたい。決まった1教科を詰め込むより、その子の「やりたい」に合わせて、プログラミングから学校の勉強、舞台まで、ジャンルを越えて隣を歩きます。
生成AIが当たり前になる時代。大事なのは「AIに答えを出させる」ことではなく、「AIと一緒に考えを広げ、その答えを自分で確かめる」力です。便利な道具を、使われる側ではなく使いこなす側になる。これからを生きる子に、いちばん渡したい感覚です。
ゲームを遊ぶ子は、ゲームをつくれる。動画を見る子は、動画をつくれる。与えられたものを受け取るだけでなく、自分の手で何かを生み出す側に回った瞬間、世界の見え方が変わります。「動いた!」の感動は、何にも代えがたい原動力です。
セキュリティを仕事にしているからこそ、「守られているから挑戦できる」を信じています。間違えても笑われない心理的な安全と、ネットの危険から身を守るデジタルの安全。その両方が整って初めて、子どもは思いきり手を伸ばせます。
いま、子どもがAIと自然に「会話」できるおもちゃやアプリが増えています。学びの入り口としては素晴らしい一方で、わたしは一つ、静かな懸念を持っています。
機械とのやり取りには、視線・表情・身振り・声の間(ま)・距離感といった、人と人の間にあるはずの「ことば以外の情報」が、ほとんど伴いません。会話の多くは、実はこの非言語の部分でできています。もし機械との対話だけでコミュニケーションを覚えてしまったら——いざ現実で人と向き合ったとき、うまく通じ合えないのではないか。
だからわたしは、勉強やプログラミングに加えて、演劇やミュージカルを教えています。舞台は、視線・声・間・からだを総動員して「伝える」「受け取る」を磨く、最高の練習場です。生身の人間の前で表現し、その反応をまるごと浴びる——画面の中では決して育たない感覚が、そこにはあります。
これからの道具を、恐れず・依存せず、賢く使う力。考えを広げ、答えを自分で確かめる。
目を見て、間をはかり、からだで伝える。人と人として向き合う、いちばん根っこの力。
この両輪を育てたい。テクノロジーが進むほど、生身で人と通じ合える子が、いちばん強いと信じています。
大学時代、プログラミング教室の講師として、約50名の子どもたちを担当しました。最初は「どう教えれば伝わるか」ばかり考えていました。けれど、いちばん子どもが伸びる瞬間は、わたしが上手に説明したときではありませんでした。
それは、ある子が自分でつくったゲームが初めて動いたとき。画面の中のキャラクターが、自分の書いた通りに動いた、あの瞬間の目の輝き。「先生、見て!」のひと言。あのとき、教えるとは「伝える」ことではなく、本人が見つける手伝いをすることなのだと、子どもたちから教わりました。
それ以来わたしは、1つの正解を教え込むスタイルをやめました。その子が学びたいものを、その子のペースで、一緒に。プログラミングから学校の勉強、ミュージカルや演劇まで——ジャンルを越えて伴走するうちに、これまでに 8 名の教え子が、コンテストや大会で入賞するまでになりました。けれど、いちばん誇りに思っているのは賞そのものよりも、「やってみたい」と言える子が増えたことです。
まず、その子が何にワクワクするのかを観察します。やりたいことが決まっていなくても大丈夫。いろいろ触ってみる中から、目が輝く瞬間を見つけます。
大きな目標も、小さな「できた!」の積み重ね。すぐ手を動かして、すぐ動かして、すぐ直す。成功も失敗もその場で味わう、短いサイクルを大切にします。
つくったものは、家族や友だち、コンテストや発表会へ。誰かに見てもらう緊張と喜びが、次の「やってみたい」を連れてきます。
家庭の環境や住んでいる場所に関係なく、すべての子どもが「つくる側」になれる入り口をつくりたい。地域の子ども向けプログラミング道場での活動も、その第一歩です。
CoderDojo 溝口など、誰でも参加できる場での活動。「習い事」のハードルの前に、まず「触れてみる」機会を増やしていきます。
道具が変われば、学び方も変わります。AIを賢く使いこなしながら、自分の頭で考える力を育てる——その両立のかたちを、子どもたちと探り続けます。
考え方に共感していただけたら、ぜひ一度お話しさせてください。お子さまの「好き」や、保護者の方のご相談、どんな入り口からでも歓迎です。